本日は『窮理』第16号の発売日です。

どうぞよろしくお願い致します。

以下、各記事の概要を案内いたします。

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佐々木節「宇宙三題噺:暗黒物質・重力波・原始ブラックホール」

佐々木節先生には、最近話題の「暗黒物質の原始ブラックホール」説を重力波観測と絡めた三題噺として紹介いただきました。神岡で始動したKAGRAも登場し、時代はまさに重力波天文学の到来です。

池内 了「江戸の宇宙論―二人の窮理学(後編)金貸し升屋の山片蟠桃」

前号に続く池内先生の後編は、巻頭の佐々木先生の現代の話から遡ること200年前の江戸時代後期に、商人としても活躍した山片蟠桃が主人公です。商人ならではの合理的思考も窺える蟠桃の宇宙像を紹介いただきました。江戸時代が文系・理系の隔たりのない多様な時代だったこともよく分かります。窮理学の醍醐味を味わってみてください。(『夢の代』参考画像

亀淵 迪「旅の楽しみ」

9号ぶりにご登場の亀淵先生には、昔ならではの悦ばしき列車の旅の思い出話を。中谷兄弟と同郷の亀淵先生にとって馴染み深い、彼の地を走るSL車窓の絶景とはいかに・・・。多くの著名人も魅了された景観です。いわば『窮理』版「日本の車窓から」と言ってもよいでしょう。

高瀬正仁「岡潔と中谷治宇二郎―学問を支える友情」

高瀬先生には、これまで評伝に携わってこられた岡潔先生と、昨年第13号で取り上げた中谷治宇二郎先生との深い友情のエピソードを、治宇二郎先生の書簡を挿みながら紹介していただきました。共鳴し合った二つの音叉が今も響きます。

高木 翼「論理学に魅せられて」

小誌初掲載の現役博士課程学生のエッセイです。高木氏には、研究している論理学を学ぶに至った来し方を振り返り、現在研究生活を送る胸中を語っていただきました。これから論理学を学ぼうとしている人や、どのような学科に行くのがよいか悩んでいる人にも参考になればと思います。入魂といってよい学問に捧げる決意表明の文章です。

杉山滋郎「堀内壽郎の欧州留学生活―量子力学・重水素・ナチス台頭(二)」

杉山先生の連載第二回は、エドワード・テラーとの交友について。テラーの異才ぶりもさることながら、ハンガリー人と日本人の関わりも見え隠れします。次回の伏線ともなる二人の関係性に注目です。

井元信之「音楽談話室(十六)寺田寅彦のオルガン」

井元先生の音楽談話室は、寺田寅彦ファンには嬉しい寅彦先生の楽器を巡る話の第一彈。『柿の種』所収で知られる寅彦先生作詞作曲のあの曲と、東大生には馴染み深い田丸卓郎先生作曲のあの曲との比較を、オルガンやピアノを通して解説していただきました。あの随筆に出て来る、あの曲を、寅彦オルガンで実際に弾いてみた話なども登場します。寅彦先生はやっぱり“和”でした!(寺田寅彦記念館

伊藤憲二「仁科芳雄と日独青年物理学者たち(三)K・ビルスと戦前日本の外国人研究者(前編)」

伊藤先生の連載第三回は、朝永振一郎先生と交換留学の相手として来日したカルル・ビルスを前後二編に分けて紹介していきます。前編の今回は、ビルスの人物紹介と受け入れを巡る日本側の苦労話です。仁科先生がいかに受け入れていったかが見所でもあります。

随筆遺産発掘(十六)ー本多光太郎「模倣と創造」(解説:細川光洋)

今回は前号の長岡半太郎と並ぶ理研の三太郎の一人、本多光太郎を取り上げました。鉄鋼の父である本多にとって、学術的な基礎研究の創造性とはどんな意味をもつものだったのか、本人の文章を通して、実験の極意と日本の物理冶金学の源に迫ります。(本多記念館

尾関 章「本読み えんたんぐる(十二)コロナ時代のペスト的、もしくはカミュ的状況」

今回は、今まさに渦中の新型コロナウイルスを巡るテーマ。表題を見れば分かるとおり、今回の蔓延を機に読まれた方も多いと思われるあの本も登場します。一方で、感染の数理から見る冷静な視点も加え、今年亡くなった物性物理の巨匠フィリップ・アンダーソンの言葉が意味を投げかけます。

佐藤文隆「窮理逍遙(九)ワーナーとインゲ」

佐藤先生の連載第九回は、相対論研究で知られるワーナー・イスラエルの話。ホーキングとの話や、京大基研来日時のエピソードなど、日本文化を愛するイスラエル夫妻の姿にほのぼのします。

川島禎子「窮理の種(十五)カマキリの乱」

今回は寅彦先生若かりし頃の句を二つ。当時の社会状況をうまく表した句です。同郷の作家の言葉も背景に読み進めていくと、表題の言葉がまさに現代にも通じる感性であることに気づきます。