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“一人の無名作家”中谷治宇二郎とその兄 宇吉郎

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“一人の無名作家”中谷治宇二郎とその兄 宇吉郎

中谷宇吉郎には考古学者の弟がいました。若くして亡くなったその青年は、10代の頃から才気に溢れ、特に文学においては芥川龍之介から高い評価を受けるほどの人物でした。

そのことについて、兄の宇吉郎が「一人の無名作家」と題した短い随筆において語っているので、一部を引用紹介します。

治宇二郎というのは、まことに妙な字面であるが、宇という字を入れるきまりになっていたので、こういう名前になったのである。治宇二郎は、中学の三年頃から、当時の文学青年になって、同窓の中学生たちと、同人雑誌を出していた。『跫音』という名前の雑誌であった。芥川に褒められた短編はたしか、中学五年の頃に書いたものである。(『百日物語』より)

この引用文中にある『跫音』(あしおと)という雑誌が、中谷兄弟の研究をされている山崎敏晴氏によって、2015年に発見され陽の目を見ることができました。

“芥川に褒められた”この短編の題は「独創者の喜び」というもので、「一人の無名作家」という題は、芥川がそれを評したときのタイトルでもあります。

嬉しいことに、この「独創者の喜び」が、芥川の評文と兄 宇吉郎の紹介随筆と合わせて、さらに同時期に治宇二郎によって発行された『片山津温泉』も収載され、“朗読用テキスト”として中谷宇吉郎 雪の科学館友の会から発行されました。

雪の科学館のほか、京都の古書店 善行堂さんでも販売されておりますので、興味のある方はぜひご購入ください。

中谷兄弟の写真が表紙にあり、朗読用テキストのため、ルビや注も入っていてとても読みやすく作られています。

18才の青年が書いた作品とは思えない、まさに才気煥発のきらきらしさを感じさせます。

 

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