愛知敬一の『電子の自叙伝』
第5号から伊藤憲二先生の人物連載第2弾「愛知敬一と『電子の自叙伝』」が始まりました。
漱石の『吾輩は猫である』の雰囲気を醸し出しているところが“通俗電気講話”らしいですが、分かりやすく一般読者に伝えるという視点としては、現代でも見習うべき点が多い書だと思います。
この『電子の自叙伝』は、前編と後編に分かれており、前編が本連載で紹介している、漱石の『猫』を思わす文体ですが、後編は打って変わって“吾輩”調の文体ではなく、人間の視点から解説されています。
今後の連載を読むための参考として、『電子の自叙伝』の目次構成などを案内しておきたいと思います。
電子の自叙伝 目次概要(章タイトルのみ)
前編
電子の挨拶/第一章 密集するのが嫌ひ/第二章 進行すると電流/第三章 ぐるぐる廻ると磁石/第四章 吾輩は人間のためにどんな働きをするか/第五章 無線電信も吾輩がする/第六章 光や熱は誰が出すのか/第七章 吾輩は星の世界から通信する/第八章 人間が吾輩電子を発見した次第/第九章 X線も吾輩が出す/第十章 物質の内に封じ込められた友人
後編
第一章 電池/第二章 電信/第三章 電話/第四章 電車/第五章 電動機/第六章 電機の輸送/第七章 電燈/第八章 無線電話と電話
この本が書かれたのは1923年(大正12年)3月で、愛知は同年6月に急逝しており(これについては別の項目で紹介)、奥付をみると、本書が刊行されたのは亡くなった後の10月であることが分かります。また、この年の9月1日には関東大震災もありましたので、『電子の自叙伝』は著者亡き後、非常時の中で世に出ていたことになります。
以下に、書影と奥付を参考に上げておきます。